日本における外傷治療は、解剖学的部位に分かれた専門チームが集まり、治療を進めていくことが多い。しかし、そうしたいわゆる縦割チームの集合体が、必ずしも有効に機能するわけではない。頭部、体幹部外傷に合併した機能部位の外傷においても同様である。それらを統括し、治療戦略を立て、治療を行うことができる医療チームが必要になる。
日本においてもAcute Care Surgeryという概念が認知されてきており、当院においても重症体幹部外傷や急性腹症の急性期治療、集中治療に成果をあげている。
重症外傷においては、体幹部外傷に骨盤、脊椎脊髄、四肢外傷を合併していることも少なくない。重症外傷患者に対しては、それらも含めて、一括して治療戦略をたて、治療することが望ましいが、本邦における教育、診療では、それは難しい。大阪府泉州救命救急センターでは、体幹部外傷に従事してきた医師に対しても、機能外傷に対する急性期治療およびその治療戦略を教育、実診療に当たってもらい、脳神経外科部門とも協力し、真の意味でのAcute General Trauma Surgeonの育成に努めている。一方、医療は専門性を高めており、すべてに通じることは不可能である。生命の危機を回避したのちは、機能を扱う専門チームに治療に参画してもらい、社会復帰に向けた治療を進めていく。我々は、外傷治療を統括できる医師の育成に当たっている。
外傷機能外科部長 日下部賢治